はじめに
システムトレーディングにおける適正なドローダウンについて考える際、まずドローダウンの概念を理解することが重要です。
ドローダウンとは、資産の最高値からの最大の減少率を指し、トレーディング戦略のリスクを評価するのに役立ちます。
こちらは過去記事にもありますので、ぜひ読んでみて下さい。
ただ先に結論だけ申し上げあると、
正解などありません。
もし間違いがあるとするならば、
予定しないドローダウンに出くわした時に
あたふたすることです。
あたふたするということは、
自分の頭で考えていない、戦略ということになります。
リスク管理に関して他者からのアドバイスは参考にはなりますが、決定打にはなりません。
適正なドローダウンの設定
個々のリスク許容度の理解
適正なドローダウンの設定には、まず自身のリスク許容度を理解することが必要です。これは、損失に対する個人の感受性と、投資資本が減少した場合の精神的、財政的な耐性に基づきます。
リスク許容度は、年齢、資産の大きさ、投資目標、そして将来の収入見込みなど、多くの要因によって左右されます。
投資目標との整合性
長期的な投資目標とドローダウンの設定は密接に関連しています。
例えば、退職資金の運用を目的とする場合、資本の安全性が優先され、低いドローダウンレベル(例えば5%未満)が望ましいと考えられます。
これは、資本を長期にわたって安全に保持し、計画された退職生活に必要な資金を確保するためです。
リスクとリターンのバランス
一方で、より高いリターンを目指して積極的にリスクを取る意欲があるトレーダーは、より高いドローダウンを受け入れることがあります。
例えば、若年で投資期間が長く、投資損失を回復する時間と能力がある人は、20%以上のドローダウンを許容するかもしれません。
このような戦略は、短期的な価格変動を乗り越え、長期的な成長を追求することを目的としています。
具体例:適正ドローダウンの設定
考えられるシナリオとして、50歳の投資家が退職後の生活資金を増やすためにFXトレーディングを始めた場合を想定します。
彼は、退職資金をリスクに晒すことに対して慎重であり、自身の投資ポートフォリオで最大10%のドローダウンを設定することを決定しました。
このレベルは、彼のリスク許容度、資本の大きさ、そして彼が抱える精神的なストレスを考慮して選ばれました。
彼はこのドローダウンレベルを維持するために、分散投資を強化し、リスク管理のための具体的な戦略(例えばストップロスオーダーの設定)を適用しています。
一般的な指針として
適正なドローダウンのパーセントは、一概には言えまえん。
個々の投資家やトレーダーのリスク許容度、投資目標、投資期間、資産の大きさ、および市場の状況に大きく依存します。しかし、一般的な指針としては、以下のような範囲が考えられます。
- 保守的な投資家: 通常、リスクを最小限に抑えたいと考える保守的な投資家は、5%から10%未満のドローダウンを許容範囲と見なすことが多いです。これは、資本の安全性を最優先し、大きな損失を避けたいという願望から来ています。
- 中程度のリスク許容度を持つ投資家: よりバランスの取れたアプローチをとる投資家は、10%から20%程度のドローダウンを適正なリスクとして受け入れることがあります。これらの投資家は、より高いリターンを目指しつつも、ある程度のリスクを許容する傾向にあります。
- 積極的な投資家: 高いリターンを追求し、それに伴う高いリスクを受け入れる意欲がある積極的な投資家やトレーダーは、20%以上のドローダウンを許容することがあります。このような投資家は、短期的な価格変動を利用して利益を得ることに重点を置いています。
重要なのは、ドローダウンの許容範囲を自分の投資戦略に適合させ、自分自身が快適に感じるリスクレベルを維持することです。
適正なドローダウンレベルを設定することは、投資のパフォーマンスを最大化し、不必要な精神的ストレスを避けるためにも重要です。
また、市場の変動性や自分自身の財務状況が変わった場合には、ドローダウンの許容範囲を再評価することも必要です。
ドローダウンの管理方法
利益を上げる方法の検索はかなり真剣にやる人が多いですが、リスク管理についてやる人は極端に少なくなります。
既にご存じかと思いますが、勝てるトレーダーの特徴として必ずあげられるのは、リスク管理の勉強をしっかりとしているところです。
平時の時こそこの問題にしっかりと取り組むことが重要です。
リスク管理の強化
リスク管理を強化するためには、トレードごとにリスクを限定し、ストップロスオーダーを活用することが有効です。
※損切のことです。
ストップロスオーダーは、事前に定めた価格に到達した場合に自動的にポジションを閉じる注文で、損失を事前に定めた範囲内に抑えることができます。
例えば、FXトレードで100万円を投資し、2%のリスク許容度でトレードを行う場合、2万円を損失を上限としてストップロスを設定します。
これにより、予想外の市場の動きによる大きな損失を回避することができます。
様々ツールもありますのでぜひ活用してください。
多様化
多様化は、リスクを分散しドローダウンを低減する重要な戦略です。
異なる資産クラス(株式、債券、不動産、商品など)や戦略に投資することで、特定の市場やセクターの下落が全体のポートフォリオに与える影響を軽減できます。
例えば、テクノロジー株が大きく下落した場合でも、ポートフォリオ内の債券や不動産投資が安定していれば、全体のドローダウンは抑えられます。
通貨ペアでのポートフォリオを組みたい場合は、クアント(クオンツ)アナライザーがおすすめです。
レバレッジの制限
レバレッジを使用することで、投資資本以上の金額をトレードに利用できますが、これはリスクとドローダウンを増加させる可能性があります。
適切なレバレッジレベルの設定は、高いリターンを目指しつつも、リスクを管理するために重要です。例えば、レバレッジを5倍に設定した場合、市場が予想と逆方向に動けば、損失も5倍に増加するため、慎重なレバレッジの使用が求められます。
特に海外FXのブローカーは1000倍のレバッジを提供しているので、管理が出来ない方や初心者であれば国内の証券会社を利用した方がよいかもしれません。
国内FXは25倍が最大です。
個人的には十分すぎるレバレッジだと思います。
パフォーマンスの監視と調整
戦略のパフォーマンスを定期的に監視し、市場環境や自身の投資目標に応じて調整を行うことが必要です。
例えば、市場のボラティリティが増加した場合、より保守的なポジションサイズへの調整や、リスク管理戦略の見直しが必要になることがあります。
また、定期的なレビューを通じて、パフォーマンスが期待に満たない戦略は見直し、より効果的な戦略へとシフトすることが、リスクを避けつつリターンを最大化する方法となります。
追記【質問への回答】:ナンピンマーチンにおける適正のドローダウンとは
下記のような興味深いご質問があったので、私の個人的な回答を書きたいと思います。
テストを通して疑問に感じたことがあります。
ナンピンマーチン系のドローダウンはだいたいどのくらいか?適正なのか
杉原さんの肌感覚で構いませんので、目安ご教示願えませんでしょうか?
今まで裁量しかやっておらず、DD20パーとか行くことは考えられないので、経験豊富な方にお聞きできればと思った次第です。
特典や別の記事でも重複する内容を含みます。
あくまで今回は、ご質問して下さった質問者様へ向けての回答となります。
>ナンピンマーチン系のドローダウンはだいたいどのくらいか?適正なのか杉原さんの肌感覚で構いませんので、目安ご教示願えませんでしょうか?
既にこの記事でもお伝えした通り、戦略やどのくらいの期間、そして余裕資金が人によって違いますので、適正という考えはまずは持たない方が良いと思います。
そう書くと回答にならないので、
あくまでも例として1つご紹介します。
証拠金を100万円と仮定します。
バックテストで、最大DDが30%の結果が過去5年間の間に2回あった場合。
40%の最大DDがでたら損切するなどのルールを作るのも1つの方法としてあります。
基本的にナンピンマーチンは勝率はかなり高いものなので、普段のレンジ相場や多少の上昇や下降相場は全くといっていいほどに、最大DDの参考にはなりません。
ナンピンマーチンの弱いところは、急騰、急落、そして地味な上昇と下降です。
参考動画
したがって、そのような場面でルールをつくっているかどうか重要となります。
>今まで裁量しかやっておらず、DD20パーとか行くことは考えられないので、経験豊富な方にお聞きできればと思った次第です。
恐らく戦略が違うので裁量トレードの考えはすべて白紙に戻して良いと思います。
あくまでもEAというのは、自分がやりたいトレードをシステムにやらせるだけであり、EAでやっている内容を裁量でやりたくない場合は、やらないことをお勧めします。
最後に、リスクをとるトレードをする場合は極端な話、最大DDは50%以上でも良いと思います。
ここで重要なことは、責任を取れないリスクをとることです。
最終的にはどんなに信頼できる人や優しい人がサポートについてくれたとしても、トレードは1人でやるものです。
それが納得できない場合は、デモ口座でやればよいと思います。
そのためのデモ口座です。
頑張ってください。